商品やサービスの価格を上げること、いわゆる『値上げ』に関しては、常に難しさが伴います。
一般的には物価上昇、原材料の高騰などが価格を上げる根拠として考えられます。
しかし、これらも具体的な数字を挙げて根拠を示さなければ、消費者からの支持は得られないでしょう。
そもそもなぜ値上げをするのか
まず、上で挙げた物価上昇や原材料の高騰です。
次に、戦略の変化が考えられます。
高価格帯で商品を売り、そのことによりブランドイメージを変えていくというやり方です。
後に挙げるユニクロの例ですね。
また、そもそも商品・サービスの質に対して価格設定を低くしていたので、適正と思われる価格にするということも考えられます。
しかし、これに関しては消費者との『認識のズレ』がある場合、成功しないでしょう。
商品・サービスの価値が消費者に伝わっていなければ、他の理由での値上げと何ら変わりありません。
次の項で、値上げの実例をご覧いただきます。
最近、値上げして業績が悪化した実例
最近値上げしたユニクロを運営するファーストリテイリングや東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドなどが、業績を悪化させています。
ファーストリテイリングは、2014年に秋冬商品を平均5%値上げし、2015年の秋冬商品も平均10%値上げしています。
その結果、2016年8月期第2四半期(9~2月期)の営業利益が993億円(33.8%減)と大きく下げています。
ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は、二度の値上げが不振の原因になったと認めたうえで、
「プライスラインを1990円、2990円といったシンプルな価格に戻す」
と表明しています。
また、オリエンタルランドは16年3月期、テーマーパーク事業(東京ディズニーランド、ディズニーシーなど)の営業利益を2.9%減と発表しました。
入園者数も3.8%減だそうです。
2015年4月にチケット価格を値上げした影響が、ここにきて大きく影響したと見てよいでしょう。
(2014年4月、2016年4月にも値上げを実施し、3年連続の値上げ)
ちなみにオリエンタルランドの公式発表では
ゲストの「体験価値」が向上したこと、そして今後のパーク開発のため
に値上げを行なったそうです。
最近、値上げして成功した実例
最近、値上げして成功した例としては、赤城乳業でしょうか。
赤城乳業は、2016年4月からアイスクリーム全商品を10~30円値上げしました。
看板商品の【ガリガリ君】は10円(16.7%)の値上げで70円(税別)となりました。
値上げが成功した要因として、25年間も値上げしなかったという背景があったからですし、値上げしてもまだ安いという認識があるからではあります。
後で説明しますが、値上げする妥当な理由があったわけですね。
それに加えて、消費者に受け入れられた大きな要因に、会社自体に良いイメージがあったことは間違いありません。
赤城乳業では、テレビ、雑誌、インターネットメディアなど値上げに関しての取材依頼には全て対応したそうです。
また、インターネットの動画サイトなどで話題となった、値上げに際しての『お詫びCM』も良い影響を与えました。
TVCM「ガリガリ君値上げ編」
赤城乳業の経営陣は、値上げしたことにより、前年比で6%程度の売り上げ減を見込んでいたそうです。
しかし、蓋を開けてみれば、2016年4月の販売本数は前年比10%増となりました。
では、どうすれば値上げできるか
「近代マーケティングの父」と呼ばれるフィリップ・コトラーは、著書で値上げに関してこう述べています。
「一般的に、突然の急な値上げより定期的な少額の値上げの方が消費者に好まれる。企業は不当に高い値段をつけているように見られることを避けなければならない」
(フィリップ・コトラー、ケビン・レーン・ケラー著『マーケティング・マネジメント』)
つまり、値上げしたいなら妥当だと思われる理由を説明した上で、急激な価格上昇は避けなさいということです。
ですので、ある意味でオリエンタルランドが行った値上げは、コトラーが言っていることに近いのかもしれません。
オリエンタルランドの今後の業績には注目したいですね。
より具体的には
値上げが妥当だと思われる理由に関しては、いくつかの方法があります。
今回はその中から二つ紹介します。
一つ目は、【商品の価値を伝える】ということです。
これに関しては当ブログでも以前にも何度か紹介していますね。
前述したように、値上げの理由の一つに、
【商品・サービスの質に対して価格設定を低くしていたので、適正と思われる価格にする】
というものがあります。
その商品・サービスの質を伝えるために、ご自身がお持ちの媒体や、お店であれば店内にそれを貼り出すなどして、どういう価値を持っているのか伝えてください。
そうすれば妥当だと思われる価格にまで値上げしても、消費者(お客さん)は納得するはずです。
二つ目は【カスタマイズ】という方法です。
商品やサービスを、顧客それぞれに合うよう変えていくというやり方ですね。
それをするのに手間がかかっているわけですから、追加料金をとられても消費者は納得してくれるはずです。
ある意味、顧客志向の最たるものと言えるでしょう。
また、そうすることでロイヤルティ(忠誠心、愛着)が高まります。
誰に対しても同じサービスをする店より、自分に合った商品・サービスを提供してくれる企業や店舗に愛着を持つのは当然のことですね。
「またあの会社(店)から買いたい」と思ってもらうことが何より大事だということです。
ちなみに、ユニクロに関してはこのどちらにも合致していませんし、コトラーの言う定期的な少額の値上げでもありません。
最後に
値上げが難しいという場合は、客数や来店頻度を上げられないか考えてみてください。
以前、この記事で売り上げの公式を紹介しましたが、
です。
無理に値上げをしなくても、客数や来店頻度を向上させれば、売り上げは上がります。
また考えようによっては、値上げすることで客数が減ってもトータルして利益が上がるのでしたら、値上げする意味はあると言えます。
もちろん状況によって変わってきますので、それに合わせて行ってみてください。
役に立ったとき、気が向いたときに是非シェアしてください。
よろしくお願いします。
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