マーケティング活動をするにあたって、必ずやるべきことの一つに、『ペルソナの設定』があります。
本記事では、ペルソナとは何か、その設定方法と手順を紹介しています。
そもそもペルソナとは?
ペルソナとは元々、ラテン語で『人』『仮面』という意味であり、ユング心理学では『人間の外的側面』をそう呼びました。
マーケティング用語としての『ペルソナ』は
「企業が提供する製品・サービスにとって、もっとも重要で象徴的なユーザーモデル」
という意味で使われます。
ものすごく平たく言うと、「こんな人が自社の商品を購入する」という人物像です。 それを作り上げることが、『ペルソナを設定する』ということです。
ペルソナがなぜ必要なのか
いわゆる『昔のマス・マーケティング』が通用しなくなったからです。
マス・マーケティングとは、対象を限定せずに画一化された手法で行うマーケティング活動です。
テレビCMなんかがそうですね。
とはいえ、今のテレビCMは『昔のマス・マーケティング』とは少し違った形になっているので、大企業を中心に続いています。
(その件はいずれ紹介するかもしれませんが、ここでは触れません)
価値観が多様化した今、消費者全員にメッセージを届けようとするとぼんやりとしたものになり、結局誰の心にも響かなくなります。
ですから、対象をある程度絞り込んだメッセージの届け方や商品開発が必要になってくるんですね。
ペルソナを設定するメリット4つ
では、次にペルソナを設定するメリットを紹介します。
顧客に対する明確なイメージ設定
ペルソナを設定することで、顧客に対する明確なイメージを持つことができます。 そうすれば自ずと伝えるべきメッセージが決まってきます。
後で詳しくお話ししますが、ペルソナに対して親近感すら覚えるようになるくらい細かく設定します。
チームメンバーのコンセンサスを合わせるため
社の内外を問わず、プロジェクトや商品開発にかかわっているメンバー全員のイメージを統一するためです。
メンバー間で意見の相違があったときに、ペルソナならどういう行動をとるかということに立ち返ることができるので便利です。
顧客へのアプローチ
ペルソナで設定した人物像に当てはまる人に対して、「自分のことを言っている」と思わせることができます。
そうすることで興味関心を得ることができ、それが広告を読み進むうちに共感へ変わり、購入という結果につながります。
また、面白いことに、ペルソナを設定すると、そのペルソナの人物像と共通点のある人も商品やサービスを購入してくれます。
その共通点というのは顧客の側が勝手に探し出してくれます。
ですから、マーケティング担当者の想定外の人が顧客になることもしばしばあります。
ニーズの発見
情報を収集していくうちに、商品を開発する段階で気づかなかった消費者のニーズがあぶり出されることがあります。 それを開発チームに伝え、商品をより良いものにすることができます。
ペルソナの設定方法、4つの手順
必ずしもこれと同じことをやる必要はないのですが、できるだけ詳しく作る方がいいです。 前項でも紹介した通り、『特定の誰かに正しくメッセージングをする』ことが重要だからです。
1. 情報収集
既にあなたに顧客がいるのなら、アンケートをとるなり、直接会って話を聞きましょう。
しかし、それが費用や時間の面で不可能であれば、営業スタッフからヒアリングするということをお勧めします。
あなたにまだ顧客がいないのであれば、競合の会社なり個人がどういった人を顧客にしているか調査しましょう。
また、ブログやSNSの情報も集めてください。
商品によってはクチコミサイトも有用かもしれません。
匿名性が保たれている場所では、顧客となりうる人の本音を聞くことができるからです。 言うまでもありませんが、ネット上の情報は嘘も含まれていますから裏どりもしてくださいね。
どの場合もそうですが、情報は多い方がいいです。
とはいえ、直接会って話をする場合、取材対象をむやみに増やしても仕方ありませんから5~10人程度にしましょう。
では次に、実際に私がペルソナを設定するとき、最低でもこれくらいの情報は集めるという具体例をご覧いただきます。
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プロフィールについて
・年齢、性別、住所、家族構成、学歴、業種、役職、仕事内容、年収、自由に使える額、性格、趣味、休日の過ごし方
ニーズについて
・どんな問題を抱えているのか
・その問題を解決するため、過去どんなことをしたのか。
・商品を買うことでどんな結果を求めているのか。
情報源 ・知りたいことがあったとき、情報を主にどこからどうやって(媒体とデバイス)入手しているか。
・購読している新聞や雑誌、定期的に見るウェブサイトやブログ
・SNSは使っているか、使っているとしたら何を使っているか(Facebook、Twitter、Instagramなど)
商品を購入する上での考え方、行動について
・こちらが売りたい商品カテゴリーについての知識がどれくらいあるか (たとえば売りたい商品が男性もののスーツなら、型や生地、色柄についての知識がどれくらいあるか)
・購入の意思決定をするときの癖(似たようなものであればできるだけ安く買いたい、クチコミを信じやすい、高級品志向など)
・購入の意思決定をするときに相談する相手(妻、仲の良い友達、仕事上の先輩、専門家など)
・過去に購入した関連商品とそれに対する評価(良かった点、悪かった点)
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売りたい商品・サービスによって変わってきますが、最低でもこれくらいの情報は集めましょう。
一人から欲しい情報がすべて集まらなくても構いません。
後で情報を精査して統合するわけですから、あまり完璧を求めすぎないようにしましょう。
2. 情報精査、統合
集まったデータを精査する段階です。
ここで大事なのは、自社商品にとって都合の良いデータばかり拾わないようにすることです。 それを防ぐためには、『KJ法』と呼ばれる手法が適しています。
集めたデータをカードや付箋などに一つずつ書いていきます。
データごとに色分けしていると見やすいのでポストイットの大きめの付箋が便利です。
データごとにまとめて、そこから共通点を探し出します。
一見、バラバラのデータでもその上位概念を考えてみてください。
たとえば、情報源はどこかという項目で、『○○というウェブサイト』『○○という個人ブログ』『クチコミサイト』という感じで集まっていたら、大きく『インターネット』とくくります。
(このとき各データも『インターネット(Webサイトや個人ブログなど)』という風に残しておくとよりわかりやすいです)
3. ペルソナ作成
実際、作成するときに気を付けたいのが、最終的にはペルソナの行動をストーリー仕立てにするということです。
そうすることによって、より生き生きとした人物像が浮かび上がってきます。
ペルソナがリアルなものになればなるほど、マーケティング上の施策を決めやすくなります。
たとえば、ペルソナの主な情報収集手段がGoogle検索なら、リスティング広告の検索連動型を使おうというように具体的になります。
実際に作成してみました。
20代~30代向けの紳士服店がペルソナを作成したらこうなるという例です。
私が顧客にインタビューしたわけではないので、恣意的な内容になっていると思いますが、あくまで書き方の一例としてご覧ください。
4. 最終調整
矛盾する人物像になっても構いません。 複数の顧客(もしくは見込み顧客)の情報を集めているので、これを一人に統合しようと思うと、人格が破綻するのが当たり前だからです。
最終的な調整段階で、そこを符号させるようにすれば良いと思います。 調整ができたら最後に名前をつけて、写真を選んでください。
写真はペルソナのイメージに合っていて、親しみがもてる人物のものにしてください。
これから何度も見ることになる書類ですので、その点は結構重要です。
このとき注意したいのが、有名人の名前、写真を使わないということです。
その有名人のイメージに引きずられると、正しいマーケティング活動ができなくなるからです。
また、肖像権にも気を付けてください。 フリー素材になっている人の写真を使うといいと思います。
コラムという名の余談
まとめ
ペルソナは一商品につき一人~三人であると考えましょう。
あまり増やしすぎると、メッセージがぼやけてしまいます。
また、最初のうちはペルソナの行動をストーリー仕立てにするのが難しいかもしれませんが、慣れるとすぐにできるようになります。
気をつけるべきは、マーケティング担当者にとって都合の良すぎる設定にしないことです。
実際に顧客から入手したデータから、できる限り客観的に判断して作成してください。
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